残った手紙

一通は棺の中に入れた。
どちらを入れたか自分でも解らない。
彼がそっちの手紙を読みたかったんだ、と思っています。
そっちにどんな事が書かれていたのかは、秘密。

読んでもらえなかった方の手紙、掲載に当たり少しは加筆修正しましたが・・・。
拝啓 まろみんの彼氏様 啓君

やっとこ、お疲れ様でした。
痛いのは、感じなくなりましたか?
呼吸は、楽になりましたか?
寝返りとかしなくても、お空だと、自由な体勢取れますか、大丈夫かな。
そちらでは、食べたい物、なんでも食べられるのかな。
誰かの手を借りなくても、自由に動き回れて、見えないけれど私の周りに来てくれたりしてくれてるのかしら?
普段は怖がりだけど、啓君だったら怖くないかも、待ってるょ。

俺が死ぬまでに、って託されてた事は、全部済ませたよ、安心してくださいな。
死んだらやって、って事も、出来る限りはやってみるから、ま、ちょっとどうかな、私の事だから、ズボラでサボっちゃうかな、ま、でも頑張ってみるよ。
香織ちゃんとも上手くやってけるよ、これからも、多分ね、ホント良い子だ。

う~んと、ロケット広場で最初の待ち合わせ、私、2時間とかの大寝坊をしたのが8年?9年かな、私にとって、とても大切なあの事に目処が付くより以前だから、10年前になるのかも・・・?
初デートでこんな事したんだから、待ってないよね、と思いつつ電話したら「昨夜楽しみ過ぎて寝られなかったんでしょ、待ってるから早くおいで」って・・・。
それから私、支度して、合計3時間近くも待ってたのに、嫌な顔もしないで、あの日凄く楽しかったょ。
あの時、待っててくれなければ、こんな悲しくて寂しくて辛い想いを、別れをしなくて済んだのに、と思うけど、そしたらこれまでのステキな時間も無かったって事だもんね、待っててくれてありがと。

それからも、どんなに遅れても、いつも待っててくれたけど、最期の時、昨日だけは、待っててくれなかった・・・。
けれど、良いよ、1回位、許す(笑)
って言うか、遅れてばっかりだったこと許してください。

妻帯者だった前の彼氏と別れるか迷ってた時「俺だったらどんな夜中でも祝日でもクリスマスでも誕生日でも、一緒に居れるぞ、お前が悲しんでれば慰めに行ってあげられるぞ」って・・・かっこよすぎやねん、チビな風体に似合ってないぞぉ(笑)

でも、それからはホントにいつでも一緒に居てくれて、何か不安な事が有っても、そう言えば一人だった事、なかったっけな、この10年。。。
そうやって甘やかすもんだから、これから一人が辛過ぎます。

なんて、あなたの病気が発覚した時に私が泣きながら言ったら「ごめんな、俺が死んだら良い男と絶対会わせたるから・・・」って・・・。
そういうこっちゃないんだけどね^^;

一時、退院で、油物とか駄目なのにさ、「食べたいな」、って言われると、私、ついつい買って行っちゃうじゃん、作っちゃうじゃん。
たくさん食べれた方が体調が良いって事なんだろうからって、たくさん作っちゃったわよ、買っちゃったわよ。
津久野にあるコロッケ屋さんとか美味しかったもんね。
でも、着々と進行する症状に、再入院になっちゃった時「食べれて良かった、嬉しかったぁ、ありがと」って言ってくれたけど、私は、今でもあれが良かったのか、自問自答しています。

二度目の入院で、口からご飯が食べられるようになるなら、と、手術をしたね。
傷口が痛々しくて見られない、って言ってるのに、無理やり見せてきて、お腹にホッチキスとか、もぅもぅもぅ!
オペ後、やっとご飯が食べられるようになって、病院食の足しに、と、あれこれ買って行ったら、子供のようにはしゃいで、看護士さんに見つからないように、と、引き出しに隠していたねぇ。
退院する時に残った分、まだうちにたくさん有るけど、期限までには食べ切れないや、1人じゃさ。

病気が解る前に体調を崩した時、お医者さんから運動とかしてね、なんて言われたんだよね。
一緒にウォーキングも出来るし、って、お家の前が公園で、私の家からも遠くない今のお家を私が見つけた。
その後、良くない病気だって事が解ったんだけど、お家どうしよっか、って聞いたら、買うに決まってるやん「楽しみにしてるんやから」って。
引越しとか色々と大変だったけど、おかげであなたが居なくなった日のあなたのお家で、あなたの日用品なんかを探すという役割で私の居場所がありました。
しんどかったけど、一生懸命やってよかったょ。
だけど、泣きながらガムテープ貼ったりしたんだから、いつか会ったらまた良い子良い子してよね。

副作用が強くて、帰れる状態じゃないのに、私が近くに居てるから、って無理やり帰ってきちゃったのだけど、マンションに入る廊下で前に倒れちゃった・・・。
支えてあげられなくてごめんね。
あの時はびっくりしたけど、後で聞いたら覚えてないとか・・・w
もぅ、どれだけ苦労してエレベーターに乗せてお部屋まで行ったと思っているの!
でも「お前のおかげで新しいお家に帰れた~」って・・・。
その顔見たら、そんな苦労なんてどうだって良くなったょ。

だけど、私、一緒に居てあげる事出来てましたか?
仕事だって有ったし、日々進行していく病状に、不安な日も有ったんじゃないのかしら・・・。

引っ越した事、無理やり退院した事、などなど、ホントに良かったのか今でも解らないや・・・。

結局、広いお風呂楽しみにしてたのに、数えるほどしか入ってないんじゃない?
冬になれば床暖房もとっても楽しみにしてたのに、座ると起き上がれないから、ってベッドと椅子での生活が中心になってて、それも殆ど使えなかったね。

前のお家に居たままなら、お家に使ったお金を他の治療とかに使えたんじゃないのかな・・・そうすれば奇跡も・・・なんて・・・今でも私は考えてしまうよ・・・。

近くに居ればいつでも行けるし、って言う私が、昨日も、一番遅くに到着とか・・・w
こんな事なら娘さんの負担を軽く出来るように、娘さんのお家の近くに住んだ方が良かったんじゃない?
私、要らん事ばかりしてた気がするよ・・・。
本当はもっともっと色々な楽しかった事、思い出したいのに、病気になってからの事ばっかりだね・・・。
このままだと、その内、それも思い出せなくなるのか、と、それが嫌で、日記なんか書き始めたのだけどさ。
いつかあなたに見せて「俺の知らないところでこんな事してやがったのか!」って叱られようと思っていたのに、もう、身体起こして画面に向かうのもしんどいんだったもんね。。。

私とのお付き合いは、楽しかったですか、短かかったですか?
こんなメンドクサイ素性の子との付き合い、啓ちゃんにとっては長くて苦痛だったとか?だからこんな病気になったんじゃないのかな?

私のせいだね・・・全部。

でも、私にとっては、短かったぁ。
まだまだこんな楽しい付き合いが、生活が、ずっとずっと続くと思っていた。
追い掛けていけば、そんな事も出来るんじゃないかなんて、少しは思うけども、痛いのも苦しいのも苦手だし、何よりそんな事したらあなたが怒るからね、それも出来そうにないや。

もう会えないんだね。

私なんかにいっぱい楽しい思い出をくれてありがとう。
何かください^^;